2023年産赤ワインにおけるケイ皮酸系ポリフェノールカフェオイルキナ酸含量

この度、山形大学客員教授の五十嵐喜治教授との共同研究により、主に、アントシアニンやプロアントシアニジン(縮合タンニン)以外のポリフェノールに関して分析し、ブドウ・ワイン学会でも発表を申し込みました。主な内容は以下の様です。

  1. 総ポリフェノール含量は用いた6品種のうちメルローワインやヤマブドウワインが多く,約250mg/100mLであったが、残り4品種は200㎎・100mL前後であった。
  2. ワイン中のポリフェノールをHPLCのODSカラムを用い,330nmで分析すると,どの品種のワインも保持時間が21.7minに大きなピークが存在し,標準サンプルとの比較から,このピークは3- カフェオイルキナ酸と一致した.
  3. そこで3- カフェオイルキナ酸濃度の品種間での違いを見てみると,ヤマブドウワインやマスカットベーリーAワイン及びデラウエアオレンジワインなどで多く,10mg/100mL以上であったが,ピノ・ノワールワイン,ヤマ・ソービニオンワイン及びメルローワインは6mg/100mL以下で低かった(Fig. 2).この違いは,ベニフェラ種,ラブラスカ種,及びコアニティ種など種間の違いを反映しているのかもしれない(図1)。.
  4. 今回、データは示しませんが、用いた6品種の抗酸化能試験として、DPPHラジカル消去能についても測定した。DPPHラジカル消去活性は総ポリフェノール含量と有意な相関が認められた(P=0.9).
  5. 赤ワインの総ポリフェノール含量と比較すると,カフェオイルキナ酸の濃度はその約1/10以下であり,アントシアニンやプロアントシアニジンより少ないが、生体内で抗酸化能の他に抗癌抑制作用,LDL酸化抑制作用及び認知症抑制作用など各種の生理作用があることが報告されている。